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5月
僕たちの秘密基地は宝の山なのさ!

少し眩しい日差しと、たまに吹く風が心地いい5月。
俺は部屋の窓を開け、胸いっぱいに外の空気を吸い込んだ。

「すー、はー」

……あ。懐かしい、この匂い。
昔よくかいだ、風に舞う土埃と、一年で一番濃い新緑の匂いだ。
記憶の片隅で、かすかに聞こえる川のせせらぎと、騒がしいあいつらの声が顔を出す。

俺たちはあの秘密基地で、星の数よりたくさんの夢を見ていた。

 

「将来の夢ぇ?」
「うん、大樹はある?」

小学4年生の頃。
俺は学校が終わると、親友の聡介と毎日秘密基地で過ごしていた。

「そう言う聡介は?」
「僕は…宇宙飛行士かな!新しい星を見つけて僕の名前をつけるんだ!」
「…そうすけ星? えー、なんか変」
「なんだよー! そう言う大樹の夢はなんなのさ!」

将来の夢。小学生に聞いたら、ずーっと語り続ける話題の一つだろう。

「俺は…総理大臣になって世界中のゲームとお菓子をタダにする!!」
「総理大臣!? じゃあ、大樹は勉強頑張らないとね!」
「ぅえー!? 勉強しなくてもなれるだろ!」

この時の俺は、なんで聡介が夢の話をしたのかわからなかった。
でも今思えば、秘密基地は夢を語りたくなる場所なんだと思う。

『トントントン』

誰かがはしごを登る音が聞こえる。

「合言葉を言え!『ケサケサ』!」
「『ケサランパサラン』!」

思った通り。秘密基地に来たのは、サッカークラブが終わった健太と優斗だ。

「よ!何の話してるんだ?」
「夢を語ってるんだよ。 健太と優斗の夢は?」
「サッカー選手に決まってんじゃん!」
「僕はホオジロザメとお友達になりたい」 

秘密基地にいればどんな夢だって見れる。
総理大臣に宇宙飛行士。俺たちは何にだってなれたんだ。

「じゃあ、もし全員がその夢を叶えたら…この基地に集合!」
「うん!約束!」
「おう!」
「お~」

 

あいつら、今どうしてるかな。
俺は総理大臣にはなれなかったけど__

「父ちゃん!ただいま!」
「おー、おかえりっ!」

俺によく似た、やんちゃ坊主の父親になれたぜ。

「今日はどこ行ってきたんだ?」
「へへ、秘密!」