5月
ヒーローに助けられた日

誰かが困っているとき、泣いているとき、みんなを傷つける悪いやつが現れたとき。
ピンチになると、いつも必ず助けに来てくれる正義の味方。

“Mr.ジャスティン” 
強くてかっこいい、僕の憧れ—!

今日は待ちに待ったヒーローショーの日!
憧れのヒーローに、いよいよ会えるんだ。

「パパ早く!ショーが始まっちゃうよ!」
「大丈夫だよ、何があってもヒーローは逃げないから」

朝はテレビでMr.ジャスティンを見たから、決めポーズはバッチリ。お気に入りのバッグも準備OK!
ママのお弁当を持ってヒーローショーを見たら、夜はもちろんパパとMr.ジャスティンごっこ!

僕は、早くヒーローショーの会場につきたくて、パパを置いて駆け出した。
「ジャスティンパーンチ!」

—その時。
ドオォォォォオン!!

「うわぁっ!?」
「なっ、なんだ!?」

突然大きな音が鳴って、地面がグラグラと揺れる。

「裕太!怪我はないか?」
「パパ!」
転びそうになった僕を、パパはギュッと抱きしめてくれた。

「きゃああ!助けてえ!」
「おい、なんだ……!?空から何か降ってくるぞ!」

みんなが指を差している方を見ると、ビルやお店を壊していく悪いヤツらがいた。
あいつらがみんなを困らせてるんだ!

「やめろおっ!お前らなんて、Mr.ジャスティンなら一撃だっ!」
「ケケケ!ナンダァ?オマエ……」

悪いヤツが、大きな目玉でギロッと僕の方を見た。
僕の体が固まる。胸の音も、ドキドキと鳴り出す。

「マズハ オマエカラダ!」

そう言って、悪いヤツはビルに大きなパンチをした。

ドゴォォン!!
「キャーーッ!!」

たくさんの瓦礫が、僕たちに向かって降ってくる。
このままじゃ……パパとみんなが瓦礫につぶされちゃう……!

「だめっ!!」
「祐太!?」

僕は両手を広げ、パパの前に立った。
ブルブルと震える足、僕の身体の何倍もある瓦礫、このままじゃきっと……。
だけど助けなきゃ!僕がみんなを守るんだ!
だって、Mr.ジャスティンなら…

Mr.ジャスティンなら、どんなヤツが相手でも絶対に逃げないもん!!

僕は思いっきり拳を振り上げて叫んだ!
『ジャスティンパーンチ!!』

ドオオォォン!!
僕は思わず、ギュッと目を瞑っていた。

「……くやった…!」

聞き覚えのある声。
目を開けると、目の前にあのヒーローがいた。
「……よくやった、勇敢な少年!」
「Mr…ジャスティン……?…来てくれたの…?」

「そうとも!君がピンチのとき、私は必ず駆けつける!」

初めて見た、本物のヒーロー。ずっと会いたかった……本当にいたんだ!
「さぁ、ここは危ない!安全なところまで送ってあげよう」
「待って!」

「Mr.ジャスティン、僕も、ヒーローになれる?」
「……君は私と同じ、強い心を持っている。君は、もう立派なヒーローだ!」

僕の胸をとんと叩いたMr.ジャスティンは、ほんとうにかっこよくて。
敵を倒しに向かう、大きな背中に、僕は体がぶるりと震えた。

「Mr.ジャスティン!いけー!!」

僕、決めたよ。
必ず皆を守る、強いヒーローになる。

今日は僕がそう決意した—
「ヒーローに助けられた日」だ!